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最高裁判所第三小法廷 昭和41年(オ)1007号 判決 1968年4月02日

上告人

池田延太郎

右代理人

渡辺粛郎

被上告人

明石不動産株式会社

右代表者清算人

明石忠平

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人渡辺粛郎の上告理由第一、二点について。

被上告人は宅地建物取引業を営む商人であるが、上告人(買主)と矢辺清兵衛(売主)との間に本件不動産について売買契約を成立させるため、上告人を現場に案内し、売買代金額については、売主側金二、五〇〇万円、買主側金二、〇〇〇万円以下の言い分を調整して、結局金一、七〇〇万円と合意させ、売買契約に立ち会い、売買契約書には被上告人の用意した用紙を使わせ、被上告人が媒介者として記名捺印し、売買不動産の受渡し、代金の授受、登記申請書類のとり揃えは、被上告人の関与の下に行なわれ、その仲介の労も主として上告人の側に立つて、その利益のためにされたものであり、このことを上告人は取引交渉の経過中に知ることができたものであることは、原審が適法に認定したところであり、右売買契約は昭和三三年一一月三日にされ、その履行が同年一二月一五日完了したことは、当事者間に争いない事実として、原審の確定したところである。そうとすれば、被上告人と上告人との間には本件不動産売買について明示の媒介契約はされなかつたが、報酬額について定めのない黙示の媒介契約がおそくとも右売買成立のときまでにされたと解すべきである。ところで、商法五一二条は、商人がその営業の範囲内の行為をすることを委託されて、その行為をした場合において、その委託契約に報酬についての定めがないときは、商人は委託者に対し相当の報酬を請求できるという趣旨に解すべきであるから、前記説示に照らし、被上告人は、上告人に対し、本件不動産売買の媒介のための報酬を請求できるといわなければならない。したがつて、原判決は結論において相当であり、所論の違法はなく、論旨は採用できない。

同第三点について。

買主から依頼を受けた仲介人が数人ある場合には、各自は特約等特段の事情のないかぎり、売買の媒介に尽力した度合に応じて、報酬額を按分して請求できるものと解するを相当とするところ、原審は、この基準により、被上告人の上告人に対する本件不動産売買の媒介報酬額を金二五万円と認定したものであり、この認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯できる。原判決には所論の違法はない。論旨は採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(横田正俊 田中二郎 下村三郎 松本正雄 飯村義美)

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